スタッフブログ

blog

障害者雇用の今後の展望

産経新聞で「企業で働く障害者67万人、過去最多も法定率届かず 満たした企業は46%」という記事を見ました。

障害者雇用促進法では、民間企業において従業員が45名以上いる場合、障害者を2.2%以上雇用しなければならないと定めています。従って、45名の企業であれば、1名以上の障害者を雇用する必要があります。しかし、現在でも対象となる企業の半数以上がこの雇用率を満たしていないのは、非常に残念です。

なお、国の定める障害者雇用率を満たせば、単純計算で約130万人の障害者が働けることになります。しかし、日本には障害者手帳を取得している人が約800万人とも言われており、雇用率を満たしても、実際に雇用される障害者は全体の16%程度にとどまるという見方もあります。すべての障害者が働くことは難しいかもしれませんが、「働きたい」と思う障害者が働ける環境を整えることができれば、障害者雇用促進法の本来の趣旨に近づくのではないでしょうか。障害者雇用促進法の目的は、障害者の社会参加を促進し、彼らの自立支援を実現することです。そのためには、雇用機会の拡充と環境整備が不可欠です。

それでも、私自身の経験から、すべての企業が雇用率を満たすのは難しいと考えています。例えば、2018年には官公庁で障害者雇用率の水増し問題が発覚しましたが、官公庁でさえもその認識は「数字を満たすためのもの」であり、残念ながらその程度の認識にとどまっていたのです。数年前の問題ではありますが、現在でも障害者に対する認識が十分でないという現実があると感じています。企業が雇用率を満たすためには、障害者に対する理解や支援の体制が整っていなければなりません。それには時間と努力が必要であり、障害者に対する知識や意識の改革が必要不可欠だと感じます。

過去の総務省や厚生労働省、福祉団体等の調査によると、障害者手帳に関する認知度は70%~80%との統計が出ています。この数字は、国民の多くが障害者手帳について認知していることを示していると言えますが、逆に言うと5人に1人は障害者手帳の存在自体を知らないということでもあります。認知度が高いとはいえ、障害者手帳が必要な人々についての理解が足りない現状があります。

先に述べた障害者雇用率に当てはめると、45人の企業であれば、そのうち5人は障害者手帳について認知していない可能性があるということです。雇用主はまず障害者について従業員に説明をしなければならないというハードルを越え、さらに障害特性に合わせた受け入れ態勢(環境整備)や雇用後のフォローアップを考慮しなければならないため、雇用率が上がりにくい原因となっているのかもしれません。それは知らないからハードルが高く見えるだけなのかもしれません。そのため私たち、障害者施設で働く職員が障害者に対する知識や経験を本来であれば、積極的に発信することで、こういった現状も変えることができるのではないかとも思います。

車いすのモデルである葦原海さんが「フロリダのディズニーランドで車いすのスタッフが働いていたことに驚きを感じた」と話していたことがありました。この事例は、障害者が働くことを前提にした社会の仕組みが整っていることを示しています。日本でも、そのような環境を作り、障害者が社会で自然に働くことが当たり前の光景となれば、雇用の現状も大きく変わるはずです。

障害者と共に働くことで、互いに理解し支え合う社会が実現すれば、より良い日本になるかもしれません。企業が障害者雇用に積極的に取り組み、社会全体でインクルーシブな環境を作り出すことができれば、障害者が社会の一員として自立し、企業や社会にも新たな価値をもたらすことができると信じています。